最高のドリルとは?

目的を持ってドリルをする(その1)


コーチのみなさんはレッスンで行うドリルを決めるときに何を考えて決めていますか? 他のコーチがしているからミニテニスから始めよう、この前見た有名なコーチがしていたドリルをしてみよう、自分が習っていたころの練習メニューと同じドリルをして最後にマッチ練習をしようなどといった理由でドリルを選んでいることはないでしょうか?

ドリルはあくまでドリルでありシンプルなボール出しの組合せからなる練習方法です。特別な魔法のあるドリルなど存在はしません。大切なことはドリルの種類ではなくどのようにそのドリルを運営するかです。選手・コーチ・保護者の誰もがドリルを楽しみにしていないなら、それはドリルが正しく運営されていない証拠だといえるでしょう。

ドリルにはヒッティングやマッチ練習にはないメリットがあります。選手の具体的なニーズに合わせてカスタマイズでき、テクニック・安定性・パワー・動き・体力・戦術など、多様なスキルをひとつの練習の中で同時に鍛えることができます。このシリーズでは、JTLが考える「目的を持ったドリル」の考え方と実践方法を2回(予定)に分けてお伝えしたいと思います。最高のドリルとは、高額な機材を使ったものや有名なコーチが考えたものではなく、選手の成長のための明確な目的が設定されコーチと選手によって適切に運用されたドリルのことなのです。


ポイント1:安全管理

ドリル中の安全確保は、すべてに優先します。

どれほど優れたドリルでも、怪我が起きた瞬間にその練習は失敗です。コーチは常にドリルの設計段階から安全を考慮する必要があります。

実践チェックリスト:

  • 使わないボールかごやその他の器具機材は必ずバックコート深くに置く
  • ドリル中に反対側のコートへボールを拾いに行かせない(ボールが当たることや捻挫のリスクを回避)
  • 待機中の選手が適切な間隔を保つようにモニターする(シャドースイングができる程度の距離を確保させる)
  • ネットに引っかかったボールは必ずローテーションごとに片付ける

特に注意したいのが最後の点です。 コート上に転がったボールは足首の捻挫の最大原因です。「あとでまとめて片付ける」ではなく、習慣として毎回のローテーションで処理することを最初から徹底してください。これはビギナーコーチが見落としがちなポイントです。


ポイント2:目標設定

どんなにシンプルなドリルでも明確な目標が必要です。「なんとなく球出しをする」と「目的を持って球出しをする」では、同じ時間でも選手の成長に大きな差が生まれます。

以下のような項目をドリルで鍛えられる主な目標として考えてみると良いでしょう:

  • テクニック ─ 特定のショットのフォーム・威力・再現性
  • ターゲット ─ 軌道イメージとコース・精度と再現性の確保・リカバリーポジション
  • 動き ─ アジリティ・バランス・コーディネーション・スピード
  • 体力 ─ 心肺機能・持久力/スタミナ・ショット時の心拍数コントロール
  • ポイント構成 ─ 始め・組み立て・ポイントの支配権の移動・フィニッシュへの流れ
  • 戦略・戦術 ─ センターコントロール(コートの支配)・異なるプレースタイルへの対応

大切なのは選手全員がその日のドリルの目標を理解していることです。練習前に「今日のこのドリルで何を磨くか」をシンプルに伝える習慣をつけましょう。目標を理解した選手とそうでない選手では同じドリルでも集中の質とそれに伴う成長度がまったく違います。


ポイント3:ドリルの導入説明

コーチがドリルの説明を省略したり不十分なまま始めてしまうと選手はドリルから十分な効果を得ることができなくなります。

コーチが陥りやすいのが「自分はわかっているからなんとなく伝わるだろう」や「以前にしたことのあるドリルだから説明はいらないだろう」という思い込みです。選手の立場に立てば、何をすべきかわからない状態で動くことは不安でありモチベーションにもなりません。またコーチにとっては何度も行っているドリルであっても選手がコーチと同じような理解をしているかどうかは完全にはわからないのです。繰り返しているドリルの場合、選手の理解度を把握するためにドリルの目的を質問してから始めてもいいと思います。もしかするとコーチが気付いていなかったドリルの効果が出てくるかもしれません。

効果的な導入の3ステップ:

① 場面を設定する 選手を集め、注意を引きつけてから「このドリルの目的・重要性」を簡潔に説明する。なぜこのドリルをやるのかを伝えることで選手の集中度が上がり効果が得られやすくなります。

② 各自の役割を説明する 打っている選手だけでなく、待機中の選手にも役割を与えましょう。フットタッピングやアンクリングをする、シャドースイングをする、ボールを拾う(危険のない範囲で)、特定の場所へリカバリーするなどがあります。全員が動いているドリルは、全員が止まっているドリルよりも効果を得やすいケースが多くあります。

③ デモンストレーションをする 百聞は一見に如かず。言葉で説明するよりも一度見せる方が格段に伝わります。コーチ自身が打てる場合はやって見せる。難しければ上手な選手に見本を見せてもらうのも有効です。


ポイント4:選手の体や態度を観察する

ドリルの効果を最大化するために、コーチはボールだけでなく選手一人ひとりの状態を常に観察する必要があります。

同じタスクを与えられても選手の反応はそれぞれ異なります。内側に閉じこもって無表情になる選手もいれば、感情が表情や言葉に出る選手もいます。疲れているのか、集中できていないのか、自信をなくしているのか──その違いを読み取ることもコーチの重要な仕事のひとつです。

コーチがすべき観察のポイント:

  • 集中が切れているサインを見逃さない
  • ネガティブな姿勢が他の選手に伝染していないか
  • 逆に落ち着かせる必要がある場面はないか

状況に応じて選手へのフィードバックを調整しましょう。時には落ち着かせる必要があり、時には鼓舞する必要があります。グループ全体への声かけと個別へのフィードバックを使い分けることが、ドリルの質を維持するカギとなります。


まとめ(その1)

ドリルの質を決めるのはドリルそのものではありません。安全に、目的を持って、全員が理解した状態で始める──この3つが揃ったとき練習は本物の学びの場になります。

次回(その2)では、能力差のある選手への対応・ドリルの発展・動画活用について取り上げます。


目的を持ってドリルをする(その2):実践・応用編

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