正しいコーチングとは?

JTLの視点
正しいコーチングとは何だろう

テニスを教える、テニスを教わる。そのとき、「正しいフォームを教えてもらうこと」をイメージする人が多いかもしれません。

科学的に効率の良いフォームや効率のよくないフォームはあります。けれど、”正しい”かどうかについては少し立ち止まって考えてみたいと思います。コーチングにおいて”正しい”とは、どのように考えることができるでしょうか。

JTLでは対象となる生徒の目標を確かめないまま「これが正しい」と型を当てはめてしまうことには慎重でありたいと考えています。

目標という言葉の輪郭

「テニスを楽しみたい」「明日の試合に勝ちたい」「強いフォアハンドを打てるようになりたい」「トップ選手になりたい」

これらは、言葉としてはすでに目標に見えます。けれど、その輪郭はまだぼんやりしていることが多いのではないでしょうか。

日頃のテニスを楽しみたい、というのはどう楽しみたいということなのか。明日の試合に勝ちたい、というのはその先にもっと大事な試合があるからなのか、それとも明日そのものが一番の目標なのか。トップ選手になりたい、というのもどのレベルのトップ選手をイメージしているのか。強いフォアハンドが欲しい、というとき、それは試合に勝つためなのか、スピードそのものを求めているのか、あるいはその先にもっと大きな夢があるのか。

こうして、本当にしたいこと、なりたい夢、気持ちのコアはどこにあるのかを一緒に確かめていく作業をJTLでは大切にしています。

夢のコアを確かめる、ということ

たとえば、「海外の試合に出て勝ちたい」という夢があったとします。この夢のコアが何かをくっきりとさせることが最初の作業になります。

それはどのレベルで勝ちたいということなのか。勝った先にさらに目指す目標はあるのか。勝つことで何を得たいのか。そうしたことを一つずつ明確にしていきます。

そうして、たとえば「最終的にはテニスの賞金で生活をしたい。だからATPツアーで安定して上位に行きたい。そのためにまずはチャレンジャーで優勝できる力を手に入れたい」というように、具体的なビジョンとして共有できる状態を目指します。

これはソーシャルプレイヤーの方でも同じです。一からフォームを作り直して憧れのトップ選手のようなフォームを身につけたい方もいれば、今の技術の最高峰を目指したい方、今持っているショットを効果的に使う方法を知りたい方、怪我なく楽にボールを飛ばせる技術を身につけたい方もいます。それぞれにそれぞれの理想があります。

ジュニア選手の場合、夢や目標がまだ具体的な形を持っていないことも少なくありません。「憧れの選手のような存在になりたい」という言葉も、その選手のどんなところに憧れているのかを一緒に確かめていくことで初めてテニスとしての必然性が見えてきます。

科学は手段であり目的地を決めるのは生徒自身

技術に関しての例として、グリップの選び方一つをとっても、ウエスタングリップやセミウエスタングリップの方が将来的に大きなパワーを生み出せる可能性があるという理論があります。

けれど、それは「パワーを求める」という目標を持つ人にとっての話です。日頃のテニスを怪我なくリラックスして楽しみたいという方に、イースタングリップからウエスタングリップへ持ち替えることを求める必要はありません。

科学的な理論は目的地にたどり着くための手段であって、目的地そのものではないのだと思います。目的地を決めるのはいつも生徒自身です。

もし今、自分の目的地が少しぼやけているように感じるなら、まずは一緒にその輪郭を確かめてみることから始めてみませんか。
指導する側の準備

正しい理論を知り、それをもとに指導できることは、とても大切なことです。ただそれは誰に対しても同じコーチングが最適であるということではありません。

自分の認識範囲内の知識を押しつけるのではなく、目標や目的に対して広く知識を求めることが大切だと考えています。大切なのは、それぞれの目標に合わせて、必要とされる知識や指導方法を選び、提示できることだとJTLでは考えています。

そのためには、一つの理論に身をうずめてしまうのではなく、テニスにこだわらず、より広い世界から学び、吸収しより多くの選択肢を持っておくことが欠かせません。

正しそうな一つの考えにだけ固着するのではなく、その考えがどういうケースや目的であれば効果的に使えるのか — そうした選択肢として持っておく準備を日頃から続けていきたいと考えています。

目標が定まってから伴走が始まる

目的地の輪郭が見えてくると、そこからの道のりや日々の取り組み、スケジュールにも初めて意味が生まれてきます。

ただ、スケジュールはあくまで目安です。実際の進み方とのずれが生まれることも決して珍しいことではありません。無理をしたり過度な重圧を感じたりすることのないようそのことも初めに伝えておきたいと思っています。

現場のコーチと、JTLの関係について

JTLの発信やツールは、科学的知識に基づく指導という考え方を中心に据えています。そのため、現場で日々選手と向き合うコーチの方々の指導と対立するもののように見えてしまうことがあるかもしれません。

JTLが目指しているのは、現場を否定することではありません。

現場のコーチが選手のために考えられる選択肢を増やすこと。そして、選手自身の「強くなりたい」という気持ちを、少しでも叶えやすくするサポートをすること。これが私たちの活動の原点です。

JTLは科学的な基盤を持つメンバーやそれを理解するメンバーで構成されていますが、その根底には、国内のテニスの指導現場が抱える身体的なしんどさ、経済的な厳しさ、効率の悪さ、一人ひとりにかかるコストの重さを実際に経験し理解してきたという背景があります。

そうした環境の中で、選手だけでなく指導するコーチも含めた現場の理想や夢を少しでも叶えやすくする仕組みをつくりたいと考えています。少しでも多くの方をサポートできる仕組みをこれからも育てていきたいと思っています。

おわりに

「正しいコーチング」とは、コーチングを受ける側の理想や夢を理解し、それを叶えるためにより適切なコーチングを行うことだと、JTLでは考えています。

そして、より適切なコーチングを行うためには選手のためであれば不要な決めつけや思い込みを進んで取り除き、多くの知識を取り込んでいくことが必要ではないかと考えています。

JTLの考え方について、もう少し詳しく
Japan Tennislink

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