グリップの呼び方(JTL推奨)と符合の重要性

JTLの視点

グリップの呼び方(JTL推奨)と符合の重要性

グリップの呼び方、正確に伝わっているでしょうか

コンチネンタル、イースタン、セミウェスタン、ウェスタン、あるいは「左手ウエスタン・右手コンチネンタル」といった組み合わせまで、テニスの指導現場ではさまざまなグリップの呼び名が使われます。ですが、これらは指導者と選手の間で正確に同じものを指せているでしょうか。

これらの名称自体は世界的に広く使われているものの、「どのベゼルからどのベゼルまでが何グリップか」という厳密な基準は、情報源によって微妙に異なるようです。大まかなイメージとしては共有されていても数値としての世界共通基準は存在しないと考えて良さそうです。

JTLがベゼル番号を使う理由

そこでJTLでは、主筆が以前発行した”DRILLS for TEACHERS”でも採用していたベゼル番号のシステムを、指導の基準として使っています。

考え方はシンプルで、ラケットを握る手のK(指の付け根側)H(手のひら側)を基準点とします。そして、ラケットハンドルの断面を8つの面(ベゼル)に分け、1〜8の番号を振ります。この2つを組み合わせることでグリップの位置を具体的な番号として表現できます。

K(指の付け根側)とH(手のひら側)の基準点を示すハンド図
図1|K・Hの基準点
ラケットハンドル断面のベゼル番号1〜8
図2|ベゼル番号(右手・グリップエンドから見た断面)
シングルハンドグリップ
グリップ名 右利き 左利き
KHKH
コンチネンタルグリップ21-281-8
イースタン フォアハンド32-377-8
イースタン バックハンド11-811-2
セミウェスタン フォアハンド4466
セミウェスタン バックハンド8822
ウェスタン5555
ダブルハンドグリップ(右手・左手それぞれのK/H)
グリップ名 右利き・右手 右利き・左手 左利き・右手 左利き・左手
KHKHKHKH
イースタンFH / イースタンFH32-377-877-832-3
イースタンFH / セミウェスタンFH32-36666-744
イースタンFH / ウェスタンFH32-35577-855
イースタンFH / セミウェスタンFH(別型)1-88661-2244
コンチネンタル / イースタンFH21-277-881-832-3
コンチネンタル / セミウェスタンFH21-26681-844
コンチネンタル / ウェスタンFH21-25581-855

このシステムがJTL以外でも使われているかは分かりませんしそれを求めているわけでもありません。大切なのは世界的な標準であることではなく、指導者と選手が同じ認識を持てるかどうかです。認識が共有されていれば、その後の指導の効果は高まりやすく、パフォーマンスの向上にもつながると同時に以降の認識のずれを最小限にすることにも貢献すると考えられます。

グリップの認識のずれについて話しましたが、
小さな認識のずれが大きな行き違いになることもあります。

言葉は近似値でしかない

コーチが発する言葉も選手が受け取る言葉も、もともとは脳内の電気信号のようなものだと考えられます。それを近似的な記号である言葉に変換して初めて、人と人との間でやり取りが可能になります。つまり、言葉のみの情報だけで、発した本人と受け取った側が完全に同じものをイメージするというのは構造的にかなり難しいことだと考えられます(数字や物理量のような普遍性の高いものは比較的ずれが少ないと考えられますが)。

グリップという一つの具体例からも分かるように、「同じ言葉=同じ認識」とは限らない場面は、テニスの指導に限らず多くあるのではないでしょうか。

ブレ幅の少ない環境を作り、ブレ幅の少ない言葉を選ぶこと。分かった風にしてやり過ごす必要はなく、伝わりにくいと感じたときほどあきらめずにすり合わせる作業が効果を生むのではないかと考えています。

グリップのような具体的で表現しやすいものでさえ共通認識を作るには一手間かかります。ましてや、感覚や意図といったより曖昧なものを伝え合うときには、なおさらの丁寧さが必要になると考えられます。指導者と選手の認識が符合しているか——それを確かめ続けることが伝えるという行為の土台になるのだと思います。

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