ラケットの基本性能について - How to choose suitable tennis racket –

パワーについての記事に関してラケットに関するコメントをいただいたりお会いしたコーチの方々にも質問を受けたため今回はラケットの基本性能に関して記事にしてみます。多くの方で議論できればいいなと思っています。

ラケットを選んだり選手にラケットを推薦する際にラケットのスペックではなく”誰のモデル”であるかやメーカーの案内文にある”初心者向け”、”アスリート向け”などのことばに頼ってしまっているコーチを少なからず見受けます。責任をもって選手に紹介する場合、表に出てくるスペックが示している内容については少なくとも理解しておくことが重要です。感覚は大事ですが自分に合うラケットがなぜ自分に合っているのかを知っておくとは、より良いラケットを見つけるための手がかりを与えてくれます。また、選手にラケットを推薦する場合には、今の状況ではなくこれからなりたいと思っている将来の姿に対して適合していくラケットを選択するという考え方もあるということを踏まえてラケット選定をすると良いでしょう。

ラケットの基本スペックについては、以下を参考にしてください。

  • ラケットの重量:スイングスピードとの関係によるパワーの算出に必要です。ラケット重量とボールとのコンタクト時のスイングスピードを掛け合わせたものが最大になるような重量を選ぶと良いでしょう。
  • バランスポイント:バランスポイントは振り始める際に必要な力と振り始めからのスイングスピードの加速にお影響を与えます。グリップエンド側のバランスは初動重視、つまり振り始める際に入力する力が少なくすみます。その一方で初動後の加速への貢献度は大きくありません。ヘッド側のバランスは逆に加速重視になります。振り始めるために大きな入力を必要とする一方、一度振り始められるとその後の加速への貢献が大きくなります。同じ重量のラケットであってもバランスポイントの差によってコンタクト時のスイングスピードが異なることを理解しておきましょう。
  • ストリングパターン:ストリングパターンは大まかにオープンパターンと呼ばれる経糸と緯糸の本数が少ないタイプ(主として16 x 19)とクローズドパターンと呼ばれる経糸と緯糸の本数が多いタイプ(主に18 x 20)に分類できます。前の数字が経糸の本数で経糸は英語ではmain stringsと呼ばれます。後ろの数字は緯糸でこちらはcross stringsと呼ばれます。経糸は英語で表される通りボールの回転に対してより多くの役割を果たします。オープンパターンのように経糸と緯糸の本数が少ない場合(“同じ面積に対して”)、ストリング間の空間が広くなります。この空間の広がりは摩擦係数を高くしますのでその結果としてスピンがかかりやすくなります。一方でクローズドパターンは経糸と緯糸の間の空間が小さくなるため摩擦係数が低くなります。その結果、スピン発生量はオープンパターンの発生量に比べて小さくなります。回転をあまりかけないテニスを目指す場合にはクローズドタイプを使用すると良いでしょう。なおそれぞれのパワーに関してはストリング自身の持つ摩擦係数と反発係数、ラケットによる最適テンションレンジなどを考える必要があるため一概にどちらのタイプがパワーを発生させやすいかを結論付けることは難しくパワーに関してはストリングテンションと関連付けて考えていくことも必要になります。

表面上のスペック値として出てこない物性としては、材質、内部の繊維長や繊維の強度、本数、内部の材質への添加材の有無、ストリング通しの直径などがあげられます。これらの要素も実際にはパフォーマンスに影響を与えますが、入手が難しい情報も含まれますのでこれらは一般的に試打をすることで感覚的に情報を入手することが多くなります。

スペックから分かる情報を理解しておくだけでもラケット選択の際に手助けになるかと思います。上に挙げたなかでもストリングパターンに関してはよく誤った情報を目にしますのでご参考になれば幸いです。