目標設定について – Appropriate goal setting is the first step for the success –

今回は前々回の記事に続いてコーチングについて書きたいと思います。

私が2000年頃にフロリダのIMGアカデミーで勉強をしたときに、5歳~10歳くらいの女子選手に片手打ちのバックハンド指導していて衝撃を受けました。そしてその時にニックボロテリー氏から聞いた話にとても感慨を受け納得したことを記憶しています。”なぜあんなに小さな女の子たちに片手バックハンドを教えているのか?”に対する彼の答えは、”彼女たちが活躍するときは今ではなく10年後だ。今できることを教えていては彼女たちが成長したときに10年前のテニスをしていることになる。10年後に何が起こるかを予測することが成功の秘訣だよ”とこっそり教えてくれました。

現状、女子においてはまだ片手打ちバックハンドは主流になっていません。先述のニックボロテリー氏の予測は残念ながら今のところ現実になっていませんが、彼の言葉には目標設定に関する重要な要素が含まれています。

コーチングにおいて、指導する選手の目標を設定することは最も重要なプロセスの一つであると言えます。目標設定の際に目標そのものと同様に重要な要素がその目標をいつ達成するのかという目標設定の期日です。これはとりわけ若いアスリートたちを指導する際に重要になります。先ほどのニック氏の言葉にあったように目標を達成するタイミングの環境を予測しその予測に基づいた目標設定と段階的な指導を行うことが重要です。また、目標を設定する時点で一般に公開されているような最先端と呼ばれるトレーニング方法は多くの場合最先端ではないということを理解しておく必要があるでしょう(本当に重要な要素はオープンにされておらずトップ選手がすでにピークを過ぎた後や引退した後に紹介されることが多く見られることからも想像できると思います)。

トレーニング技術の進化や用具の進化・変化などを予測するために様々な情報源に対してアンテナを張り巡らせていくこと、機会に恵まれることが難しいかもしれませんが各知識や学問の専門家や研究者と積極的に交流を持つこと(本web-siteがその役割の一部を果たすことを願っています)、少なくとも現時点での入手可能な最新技術を理解することは若いアスリートの指導においてはとても重要です。20年前にニックボロテリー氏が片手バックハンドをまだ小さな女子選手に教えていたこと、さらにその20年ほど前に将来のサーブ力の増大を予見して攻撃的なバックハンド両手打ちを確立していたことは彼の先見性を語るものだといえるでしょう。また彼のタレント性が彼の周りにとても優れたアドバイザーを引き寄せたことも成功の原因かもしれません。

コーチが自分自身が確立してきたテニスのコピーを教えてしまう光景を見ることがあります。これは時代遅れのテニスを助長する危険性をはらんでいることを理解する必要があります。自分のテニスはいつの時代に確立されたテニスかを考えたとき、今教えている10年前のテニスは10年後には20年前のテニスになっているのです。世界No.1を排出する最高のコーチを目指すのであれば、選手として確立してきたテニスのなかの科学的エッセンスを取り出しそのエッセンスを最新の科学的データによって昇華すること。そしてその昇華された科学的根拠にもとづいて将来の環境予測に沿ったより高い目標を設定することからスタートすることが大切です。この力をつけるにはかなりの時間と努力、勉強など自己投資が必要でしょう。しかしながら本気で世界のトップ選手を輩出するコーチを目指すのであればこれらのワークは間違いなくあなた自身を成長させるものです。

努力をおしまず一緒に前へ進んでいきましょう!!

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